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たまには占いを信じてみよう
十七年間女日照りの人生を送る高校二年生の少年があった。幼少期より、幾度か同級生の女子を好きになることはあったのだが、少年はシャイな性格、好きになった女子にその気持ちを伝えることが出来ずにいた。その結果、好きになった女子は自分ではない男を好きになってしまい、その気持ちを諦めざるをえないのであった。
そんなある日の朝、少年は自宅のリビングにて朝食のトーストを咥えながら朝の情報番組の天気予報を眺めていた。
「今日は全国的に晴れです! お洗濯物も良く乾く絶好のお洗濯日和! お布団を干してもぽかぽかします!」
ああ、今日は紛うことなき晴れか。少年はカバンの中に入れていた折りたたみ傘を家に置いて行くことに決めた。雨が降らないのに折りたたみ傘を持っていく必要性はないからである。
天気予報が終わり、朝の情報番組は「今日の星占い」にコーナーを移した。
この「今日の星占い」はサラサ・ラサラと言う顔も名前も明かされていない占い師が担当しており、最近になって良く当たるようになったと評判である。
直近ではラッキーアイテムに従って宝くじを買ったら100万円が当選したという夢のような話もあるぐらいだ。
少年はバーナム効果やプラシーボ効果もここまでくると頭がめでたいねぇと、斜に構え「今日の占い」を一切信じていなかった。そもそも、少年は現実主義で占いや神仏の類は一切信じておらず、自分の運命は自分で切り開くものと一本槍を心に持っている。
〈では、今日一番ラッキーな人は蟹座のあなた! ステキな出会いがあるかも! ラッキーアイテムはタオル!〉
少年は蟹座である。一番ラッキーな人だと言われたのに、心はどうとも思わない。占いを信じていないこともあるが、これまで何回も「蟹座が一番ラッキー」と言われたのだが、例外なく「いつもと変わらない一日」であったために「やっぱり占いはアテにならない」と信用していないからである。
とは言え、今は梅雨も明けたばかりの夏の入り。地球温暖化の影響か、まだ7月頭だと言うのに8月の夏真っ盛りのような気温を見せている。神社や公園など木が鬱蒼とした場所に行けば無料コンサート蝉時雨が開催され、夕方ともなればセミをかこむ夕べと言った感じで、蝉がもう地中から外に出ている具合である。
「今日は暑いし、汗が拭えるって小さなラッキーでも信じてみるかな」
少年はカバンの奥にタオルを無理矢理ねじ込んだ。
占いは進んでいく、そして、最後の今日一番「ついてない」人が読み上げられる。アンラッキーや不幸という言葉を使わないのは番組からの多少なりともの「やさしさ」だろうか。
〈ごめんなさい! きょう一番ついてない人は水瓶座のあなた! 今日は上手く行かない日、ラッキーアイテムはビニール袋! それでは今日も元気にいってらっしゃ~い!〉
運勢が最下位の人に謝るぐらいなら初めから占いなんてしなければいいのに。少年はそんなことを考えながら朝食を終えた。そして玄関の土間へと降り、折りたたみ傘をぽいと傘立ての中に放り込んだ。玄関の戸を開けると、空は雲ひとつ無い朝の晴天だった、雨が降る予兆のペトリコール臭も一切しない。
「よし、今日はマジで雨降らねぇな。今日も一日がんばりますかっ!」
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