たまには占いを信じてみよう

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 少年は少女によって学校の帰りにファミリーレストランに連れて行かれてしまった。その時に初めてお互いに自己紹介を行う。 入学してから二年間同じクラスだったにも関わらずお互いに名前を知らなかったのである。理由は「お互いに興味が無かった」からだ。 お互いに会話が弾む中、少女は唐突に言い出した。 「ねぇ、今、フリーだったりする?」 「え? フリーって?」 「彼女とかいるかってことよ」 少年は十七年間女日照りの人生である。当然、いるわけがないし、いたこともない。 「ああ、フリーってこういうこと? いないけど」 「じゃ、あたしと付き合わね?」 「え?」 「あたしさ、ずっと女子ばっかりのグループにいたのよ。小中高ってずっと女子と駄弁るだけみたいな学校生活送ってたのよ、虚しくね? 男子を好きになったこともないの」 「俺も、似たようなもんかな」 「でさ、昨日タオル貸してくれたのがさ、生まれて初めての男子に親切にされた瞬間だったんだ」 「冗談でしょ? さすがにそれは」 「ちょっとした親切はあったかもしれないけど、親切にされて嬉しく感じたのは初めてなんだ。胸が熱いんだよね」 「ああ、そうなの」 タオルを貸しただけでこんなに好かれるとは。女の子の気持ちを無碍にする程、俺は空気の読めない男じゃない。少年は少女と付き合うことにした。 少年はその瞬間、昨日の朝の星占いのことを思い出した。 「では、今日一番ラッキーな人は蟹座のあなた! ステキな出会いがあるかも! ラッキーアイテムはタオル!」 あの占いは当たっていた。少年はタオルを持っていき、夕立に濡れた少女と出会い、生まれて初めての彼女が出来たのだから…… そのことから、少年の女日照りの人生に潤いを与えたのは夕立の激しい雨であることは間違いない。 ただ、ステキな出会いであるかどうかは…… これからのお互い次第である。                                                         Happy End……?
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