第三話:・・できる・・のかな・・

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「しかし、難しい指使いなのに、その点は問題なく演奏している。 それに音への感性もいい。 すごい才能だと思うよ。 天からの授かり物だよ! これなら、本当に復活出来るかも知れないね!」 と、表情はすごく冷静ながらも、優しい口調で言ってくれていた。 いや、少なくとも私自身は、なにも特別じゃない。 というか、もし私にそんな特別な才能があるのなら、私はそれが自らに芽吹くように、それを選びとって大切に育てる。 音楽を奏でるための才能なら、授かったものと言う特別な響きのある言葉はとても嬉しい。 嬉しいのだけど、その気持ちとは別に、それ自体を自ら選びとったものなのだと私は思いたい。 だから、 「嶋田先生、私もビワも本気なんです。 どうか、私たちの指導をこれからもよろしくお願いします。」 そう言うと、続いてビワが 「嶋田先生! お願いします!」 と言った。 それを聞いた後で、嶋田先生はようやく表情を緩めて、 「・・こうなると、逆にやりすぎて燃え尽きないかと心配にもなるけどね・・。 焦らずにイライラせずに、常に心を整えて。 心と音は、どんな時でも連動しているから。 でも、絶対に諦めないで。」 そう言ってくれたのが嬉しくて、 私たちは声を揃えて、 「はい! ありがとうございます!」 と、そう言った。 私、今決めたよ。 私は、音楽の道に対して、言葉だけじゃなくて、私の全てをかけて飛び込む。 本気の本気で飛び込む。 私は、これからは音楽と共に生きていたい。
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