第三話:・・できる・・のかな・・

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さらに、嶋田先生は、 「音を合わせようとすることは大事だけど、その背景として、お互いの個性を尊重して演奏すると、もっと良いよ。 きみたちは、ものすごい才能をもっている。 何よりも、練習に夢中になって励むと言う才能がね。 そして奏でようとする才能がね。 きみたちの音楽は、これからはじまるんだ。 どんなときでも焦らずにイライラせずに、常に心を整えて。 心と音は、どんな時でも連動しているから。」 そう言ってくれると、いつもはいけずな嶋田先生がさらに優しく見えてくる。 そして、かっこ良くも見える。 そうだね。 私たち、いや、私は、ようやく心の準備が出来たのだと思う。 スタートラインに立つまでの準備が、ようやく出来た。 そこに飛び込むだけの気持ち、それがようやく熟成して、嶋田先生が言ってくれているような、わずかながらの才能を掲げられるようになるまで、今までかかったんだ。 確かに、これからだ。 私たちはまだまだだ。 でも私は、私たちは、絶対に追い付いてみせる。 クラシック音楽の演奏を基本としながらも、必要に応じてあらゆるジャンルの音楽を演奏していた、あの人に。
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