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ふと、黒板の上の、額に入っている墨で書かれた文字を見ていた。
「暖かい『音』をあなたに。」
「優しい『音』をあなたに。」
「美しい『音』をあなたに。」
・・私は、それを届けられるようになるのだろうか・・。
私のその様子を見ていた嶋田先生は、どこか懐かしいものを見るような表情を浮かべて、
「この標語、かつての部長が考えたものなんだって。
スゥィート・メイプル・ムジク。
時にはゴスロリファッションで身を固めて、クラシックをはじめとしたあらゆる楽曲を、超絶技巧を交えながら演奏する少数精鋭音楽隊。
そうして、自分達のスタイルを他とは違う独自のものにしていた。
どんなことでもそうだけど、苦労せずに上手くなろうなんて、そんなことは無理だ。
世の中にはこうすればうまく行く。
こうすれば大丈夫とか。
そう言う見出しで目を引くものがたくさんあって、その内容もいろいろあるけど。
でも、それは、そう言ったものに頼るのではなくて、自分の心で答えを出さなきゃダメだ。
そして、たったひとりでもやり抜くほどの精神力がないと・・
彼女達にも色々あったんだろうけど、それでもあの人達にとって、音楽は出来て当然だった。
何度も言うようだけど、あれと同じようになるためには、相当の努力が必要だよ。」
と、そう言ってくれていた。
この言葉を聞いて、私は確信した。
嶋田先生は、かつてのスゥィート・メイプル・ムジクを高く評価していているし、同時にそれであり続けることの厳しさも知ってるんだと。
そして、かつてのスゥィート・メイプル・ムジクのことを、きっとすごく好きなんだと。
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