魅せられちゃってください~another one~

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「でも好きなんだ。離れている間、隼人のことを思わない日はなかった。 何を食べ何に笑って何に悲しんでいるのか。それを側で見ることが出来ない辛さはもう嫌なんだ。 こうやって隼人に触れることができるとさ、もっともっとって欲が出てしまう。突っ走りそうになるのにブレーキかけるのに必死なんだよ。 浮かれて舞い上がって、そりゃもう大変なんだ。だってさ、こうやって大好きな隼人が側にいてくれる。幸せ過ぎておかしくなりそうなんだから」 泣きそうに顔を歪めて僕の肩を抱きしめる琥太郎さんの胸の中は、戸惑いや不安と同じくらい僕に対する想いとの間で揺れている。僕と同じなんだ。 同じ想いでこうやって愛し合っているならもう……いいのかもしれない。 「でも嬉しいよ。隼人がそんな風に心に想うことを話してくれるのは。聞きたくて知りたかった隼人の胸ん中見えるみたいでさ」 戸惑いや不安は琥太郎さんだって同じなんだ。お互い離れている間も想い合っていたんだと思えば離れていても僕達の気持ちは離れてなかったんだと嬉しくなる。 惹かれあって想いあって、そんな恋愛は僕には無縁だと思っていた頃には想像できなかったことだ。 何でも手に入れることが出来そうな琥太郎さんが人の気持ちだけはどうにもならないともがいている。 こんな僕にだよ?勿体無いくらい大切に想ってくれている。こんな幸せなんてないんじゃないのか。臆病な僕の為にこの人は沢山の愛を注いでくれる。 「琥太郎さん……ここに住んでもいいですか?」 絡み合う視線から綺麗な瞳が揺れているのが見える。琥太郎さんの想いは僕と同じ、いや僕以上に想ってくれているのかも知れない。 「……大歓迎だよ。また一緒に住めるなんて夢みたいだ」 僕の頬に溢れ落ちた涙を救うように指先が触れた。 「よろしくお願いします……もう離れませんよ……琥太郎さんとずっと一緒にいたいです……」 僕だって琥太郎さんを愛してる。相応しくないと言われてもこの気持ちは誰にも負けたりなんかしない。 僕は琥太郎さんを抱きしめるように腰に腕を回した。ほっと息を吐いた琥太郎さんの溢れる涙をペロリと舌で救った。くすぐったかったのかクスクスと笑い始めた彼を間近で見つめ、僕達は想いの詰まったキスを交わした。
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