魅せられちゃってください~another one~

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確かに五年と一言で言っても、僕にとっては長く寂しい、そして姉ちゃんに節約生活を叩き込まれた月日だった。 何かに没頭し気を紛らわせることができたのも姉ちゃんがいたからこそだと思ってる。 でも琥太郎さんは? 美陽さんが結婚したのは別れて一年経った頃だと聞いた。龍さんが大阪に引越したのもその位の時期だったと思う。 美紅ちゃんはオーストラリアの学校……英才教育をと、お父様が提案されて移住したと聞いている。 なら琥太郎さんは四年間一人で暮らしていたことになる。 一人でここで。僕とまたこうやって一緒に居られることを夢見ていてくれたんだろうか。 僕だって、思わなかったわけじゃないよ。美陽さんと美紅ちゃんがいるから……なんて思っていても琥太郎さんを忘れることなんてできなかった。 琥太郎さんを忘れた日はないんだから。 五年も経てばそれなりに歳を取った訳だし、五年前とは少しは変わったのかもしれない。いや、結構変わったかもしれない。 再会して前とは違う……なんて思っていたらどうしようかと、隣で眠る琥太郎さんのの横顔を見つめながら、下着しかつけていない身体を布団の隙間から覗いてみる。 鍛えなきゃいけないかな……琥太郎さんががっかりしないために努力しなくちゃ…… それ以外にもがっかりさせているのではないかと考えると不安になる。 以前のように抱きしめてくれる優しさは変わってはいない。愛されている。大切にされていることも伝わってくる。 そんな休日のベッドの中、目を覚まさない琥太郎さんを見つめながら、だらりと意志のない腕を自分の身体に乗せて寄り添った。 そしてウトウトし始めた矢先、けたたましくスマホが鳴り、僕達は同時に手を伸ばし無意識にスマホを探した。 身体を起こした琥太郎さんとの隙間がなんだか寂しくて、腰元に腕を回す。そんな僕の髪を優しく撫でながら話し始めた。 「ああ、わかった。今開けるから待っててくれ」 スマホを置き、見上げた僕に微笑んだ琥太郎さんはナイトテーブルに置いてあったシャツを身に纏った。 「秘書が来てるみたいだ。隼人も着替えて? 朝食にしよう」 スルリとベッドから降りた琥太郎さんを名残惜しく見つめながらもそもそと身体を起こした。 秘書……そう、琥太郎さんは社長さんなんだし秘書がいるのは当然なのに……少し表情の変わった琥太郎さんが気になり後を追った。
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