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「僕が来れない時は……秘書さんに頼むんですか?」
止められなかった言葉が溢れる。しまった!と思う気持ちと溜めておけなかった気持ちに目を合わせることができなかった。
「ああ、そうか……そうだな……俺はこういう所がダメなんだ……でも隼人のことはなんでも知っていたいから……」
尋ねたことは全く違う独り言のような返事が返ってくる。
真っ直ぐ見つめてくれるその瞳は僕だけを見てくれていることは分かってる。
だけど言葉に出来ないもどかしさがモヤモヤが心の中を覆っていくんだ。
「武内くんをもうここには来させない。買い物を頼んでたのは、独りの間に世話をやいてくれる武内君に好意に甘えていたからなんだ。
隼人がいればそんなことを頼まなくても二人ですればいい事だし、犬は俺と隼人が世話をすればいいよな」
琥太郎さんが何だって出来ることを知ってる。だけど僕を必要としてくれているなら歩み寄らないと距離ができてしまうこともわかってる。
「こんなの……我儘だってわかってるんだけど……琥太郎さんのことは僕がしたい。誰かと……秘書さんでも仲良くしてるのを見るのはイヤ」
視線の先の琥太郎さんの申し訳なさそうな表情になんだか泣きそうになった。
僕と離れていた間の琥太郎さんに妬いたって仕方ないことは頭では理解出来るのに、心は言うことを聞いてくれない。
子供のような駄々を捏ねてしまう。
「隼人」
駆け寄った琥太郎さんは床に跪き見下ろした僕を抱きしめてくれる。
「嬉しいよ。そうやって、なんでも言って欲しい。嫌なこと嬉しいことなんでも聞きたい。愛してるんだ、隼人」
僕だって愛してる。離れていても琥太郎さんのことでいっぱいだった。
言わなければ伝わらない。以前姉ちゃんに言われた言葉が甦ってくる。
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