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書店や画材屋などが建ち並ぶすずらん通りから小道に逸れると、たちまちにエスニックな香りが立ち込め、洒落た音楽がひそりと聴こえてくる。
その並びにある小さめの木製扉が目に留まったため、通り過ぎんとする足をピタリ止め「っここで雨宿りすっか、すごい雨だなっ……」と扉に手をかけた。
すると豪雨の中でも、チリン……と耳に良い音が響く。
店内はボンヤリ電球色が温もりを演出し、長めのカウンターと小さなテーブル席が三つほど。まさに純喫茶のイメージそのものと言った具合であった。
「いらっしゃいませ、ようこそ猫屋へ。空いているお好きな席へどうぞっ」
あどけなさの残る少女の声。ガラリとした店内へ手を差し伸べていた。
どうやら先客はいない様子で、店番を任されているのか、三毛柄のエプロンをつけたこの少女が一人だけの様子。
颯斗はハンカチで肩を拭きながら、どうもと会釈しカウンターの隅へ。頭の濡れたショルダーバッグや買い物袋をささっと拭き、立てかけられたメニューを一瞥した。
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