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ぽつ……ぽつ。ぽつ…………ぽつん。
「あれ、雨?」
ボクはじいちゃんのゆりいすの横をかけぬけた。足音がミシミシいう縁側から外をのぞくと、……カンカンの晴れ。
そうだよ、さっき無人駅からでっかいリュックをしょって歩いてきた。ボクの影がクッキリ地面でうごいて、たんぼ道は稲と水がキラキラで。空はまっさおだった。
今年の夏休みは、ボク一人で来られた、じいちゃんち。
「すごいわね、どんどんたくましくなるわねえ、拓ちゃん」
ばあちゃんがいっぱいほめてくれた。へへへ、電車乗りつぐの、一人でやってみたかったんだ。
じいちゃんとばあちゃんが、やれジュースだ、やれ今朝とれたトマトだとわんさか出してくれて、学校では何が得意なの、背の順は何番目なんだ、などとわいわいし、一段落。
さて出かけるぞ。ここらはオタマジャクシ天国なんだ。毎年パパやママと泊まる和室は今年はボク一人で広々だ。リュックを放りこんですぐに出て行こうとして。「いってらっしゃーい」ととなりの部屋からばあちゃんの声がした。そのときだ。
ぽつ……ぽつ。ぽつ…………ぽつん。て。
「んん?」
ボクは空を、はしからはしまでぐるりと見回した。
「雨だれだな」
雨だれって? どこに?
「気にしないでオタマジャクシ、取ってこい」
じいちゃんがどおんと背中をつき押した。いんてり……とかママが言ってたけど、のくせに、力もありあまってるじいちゃん。ボクはゴホッとむせながら帽子をかぶった。
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