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たたたた。たたたたた。
早足で窓をたたくような音。ときどきちょっとリズムがくるうような、……何か雨っちゃ雨だけど、ちがうっちゃちがうような。
雨なら小雨でも長雨でもない。かなり強め。
よし、ならば今日は家でオタマを写生しよっと。だってしっぽが短くなってきたのがあるんだぜ。そのうちカエルになって石の上に上ってくるはずだ。楽しみ。
……と思ったけど、やっぱり外は晴れている。雨音も、たった今やんだ。
「ふーむ?」
きのう出かけて帰ってからというもの、ばあちゃんはまた部屋にほぼこもっていて、……何してんだろうな。
「将棋はな、歩があって、桂馬の進み方はこうで、飛車角は――」
ばあちゃんがいないと、じいちゃんが将棋を教えようと長々説明してくる。
「そうじゃないって。銀はそっちには動けないんだ。おい、二歩はダメって何度も言っただろ!」
教え魔で短気で……しかもパワフルだから、……いんてりって、ちょっとうっとおしい。
バッチンコ!
すぐ後ろでバク音がした。びっくりしてふり返ると、ばあちゃんだった。
手には棒みたく固くねじったチラシの紙。ばあちゃんのまん前にはひっくり返ったゴキブリがいた。
「いやんなっちゃう」
うちだとパパもママもやりたがらないのに、こんなおしとやかそうなばあちゃんがゴーカイにしとめるんだよな。ハエでもカでもハチさえも、ばあちゃんは全部一発。名人級だ。
そうしておしゃかになったゴキを、手にした棒の紙を広げて丸める。
「m4d3:@jr>」
その紙に、またもナゾの、かすれた文字列。
こう見えても、ボクは探偵アニメの大ファンだ。ふーむ、真実は一つ、じっちゃんの名にかけて。
……さっぱりわからない。
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