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ピアノ弾きなんかに負けないわ。私だってこんなに指を使えちゃう。何よりパソコンて今どきでしょ。奈々子さんにはできないでしょ。私の勝ちね、ほほほほほ。
……というのが、ばあちゃんの本心だったのか、奈々子さんがそう受け取ったかどうか。
本当のところはわからないけど、あのくやしがり方。たぶん当たり。とすると、あの1行だけでわかっちゃう奈々子さんもすごい。
仲が悪いようだけど、やっぱりよっぽどの仲良しなんじゃないかな。そうじゃないと通じないよね、こんなの。ツーカーってやつでしょ。
奈々子さんちから帰る道々、じいちゃんが言ってた。
ばあちゃんは最初『暑中お見舞い』で作ってたのに、もたもたしてて立秋をすぎちゃった。今年は8月7日だというその日をすぎると『残暑お見舞い』にするものなんだってさ。それをなおそうとしたのに、変換モードがわからなくなってドツボったらしい。
「じいちゃんに聞いてくれば、すぐに直してやれたのに。ばあちゃん、絶対聞いてこないんだよな。教え方がエラそうでイヤ、なんだそうだ」
……いんてりだからね。話長いしね。でも手伝いたいんだね、じいちゃんは。
何か今日は将棋の相手をしてあげたくなってつきあった。……すぐに詰んだけど。
ボクは、夏休みの自由研究をオタマジャクシの成長日記か、せみの鳴き方観察とかにしようと思ってたんだけど。
「タッチタイピングにちょうせん」にした。だってあの夕立打ち、ボクもマスターしたくなったからさ。
(完)
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