すみ、すみ、すみ。

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 ***  亜樹ちゃんと友達になって、暫くの後。彼女を家に呼んで、一緒にゲームをしようということになった。当時ハマっていたマルチプレイ用のゲームを彼女に布教したかったのである。頭を使うゲームだったので、賢い仲間が欲しかったというのもあったり。彼女を連れて家に行く途中、亜樹ちゃんは墓場をちらりと見て言った。 「立派なお墓。すごく綺麗」 「そ、そうなの?」 「うん。……クラスの男子は、お墓だからオバケがいるはずだとか言ってたけど。オバケって、お墓には意外といなかったりするんだよ。梨子ちゃんは自分が死んだあと、ずっと自分のお墓にいたいと思う?」 「あー……それよりも、自分の家に帰りたい、かな」 「そゆこと。お墓より、自分がいたいところに行くんだよ、オバケって。殺された人とかなら、殺された場所に留まっちゃうこともあるけど、そうじゃなかったら居心地のいいところに行くよ。だってお墓にいても家族に会えないし」 「そりゃ違いない」  彼女が本当に霊感少女なのか?については正直半信半疑だった。なんせ、私にはまったく幽霊と呼ばれるものが見えなかったからである。多分、生まれつき“零感”というやつなのだろう。  ただ、彼女の話す幽霊理論に関しては結構な説得力があったのも間違いないのである。お墓より、幽霊は自分が行きたい場所に行く。自宅だったり、お気に入り場所だったり、好きな人がいるようなところだったり。自分が死んだらどこに行きたいか?と考えれば、実に筋が通った意見だった。やっぱり墓場が隣だからお化け屋敷!だなんて連中の考えは短絡的だったんだなと納得させられたものである。  そんな亜樹ちゃんとゲームをしたのは、家のリビングだった。初めて彼女を連れて行ったその日、両親は仕事でいなかった。両親の寝室と倉庫部屋だけは見せないでね、と親に口がすっぱくなるほど言われていたので私もそこだけは守っていた。実際用があるのは私の部屋とリビングだけだったので特に問題はない。テレビはリビングしかないので、テレビゲームをしようとするなら必然的にリビングに二人で溜まることになる。
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