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1.山本
真っ暗な窓の外がビカビカと光り、ビルが揺れるんじゃないかと思うほどの大きな音が鳴り響く。
「ひえっ!」
雷、怖っ。でもあとちょっと。
また窓の外がビカビカと光るけれど、目を画面から逸らさずにキーボードを打ち続ける。
「山本さん。」
「ひえっ!」
雷の音に身構えていたのに、急に男の人の声がして、椅子の上で飛び上がってしまう。振り向くと、人事部の深見翔太さんが私を見下ろしていた。
「ノー残業デーですよ。」
「残業申請出しました。」
「その申請時間まであと10分です。」
「必ずや、終わらせます。」
親指を立ててニッと笑うと、深見さんがため息をつきながら、隣の席に座る。
「先週もでしたよね?ノー残業デーの意味がないですよ。」
「すみません。」
話しながらも、画面を見据えてキーボードを打ち続ける。
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