最後の夏

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だんだん空が暗くなって ゴロゴロと遠くから雷鳴が近づいてくる 私と彼女は窓に張り付いてその雲行きを見つめる 二人とも弾む心とわくわくした気持ちを押さえきれない 二人の吐く息が窓を曇らせる ポツン 目の前の庭のコンクリが 一粒分の黒になる その瞬間 そのまままどから外にでる ざぁぁぁぁぁぁー 「いぇぇぇぇいっ!」 庭のコンクリートに裸足でステップを踏む まだ少し暑い地面を飛んで跳ねて  制服も 髪もびしょ濡れだ 「こら あんたたちなにやってるの?!」 お母さんの怒声が聞こえる でも楽しくてしかたない 走って転んで 大爆笑 だって気持ちいい だって半端ない解放感 「もう 知らないからね」 お母さんも呆れたように笑ってタオルを持ってしばらく私たちをみてる 夕立はテンション上がる なんでかわからないけど  明るくなりかけた空から 大量の雨 なんか いろいろ洗い流して 行くようで とっても身近な非日常感 すぐに過ぎ去るその瞬間の刹那的な感覚は 私達に似ているのかも 制服を着て過ごす最後の夏 ねぇ 夕立のあと空にかかる虹みたいに 私たちも大人になって行けるといいね
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