404人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
彼の腕にぎゅっと抱き締められて、私達は本当の約束を果たした。
すると、どこからともなく声が聞こえた。
【ありがとう……弦、結衣……】
「えっ、今、声が!」
彼と声を揃えて見つめ合う。
「きっと、譲とゆいだ」
「うん、そうだね」
金木犀の木を見つめて2人の事を想った。
「帰ろう。俺達の家に」
「うんっ」
それから1週間後、弦の携帯に匠君から電話がかかって来た。
お祖父さんから電話があり、池を管理しているお爺さん達と金木犀の木を見に行くと、花は全て地面に落ち、葉は枯れ、木は立ったまま枯れてしまっていたという。
160年以上も花を咲かせ、寿命が来たのだろうとお祖父さんは言ったらしいが、1週間前はあんなに綺麗に花を咲かせていたのに。
本当に私達を待っていたかのように、金木犀の木は立っていたんだと思うと涙が溢れた。
私達が1週間前に行った事を話し結婚の報告をすると、匠君は「おめでとう」と言ってくれた。
匠君に結婚式の招待状を送る事を話し、お祖父さん達も招待したいと話すと「きっと喜ぶよ」と言って住所を教えてくれた。
翌年4月1日。
澄み切った青空の下、私達は教会で結婚式を挙げた。
END
最初のコメントを投稿しよう!