417人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
そう言って先輩が私に手を伸ばし、掌で額に触れる。
「えっ、お前、熱あるじゃん」
「あっ、だから、なんか体がだるくてフラフラするのか…」
そう思っていたら、先輩に寄りかかって意識が薄くなった。
薄い意識の中で、先輩の声と爽やかないい匂いがする。
体を支えられてフラフラと歩き、どこかの部屋のドアの前。
「ほらっ、もう少し。森下、お前の家だ。鍵は鞄か?」
先輩の声がして鞄を開け、キーケースを取り出しドアの鍵を開ける。
ドアを開き中に入って、玄関で靴を脱いで先輩が屈む。
次の瞬間、フワッと体が浮いた。
先輩が私の背中と膝の裏に腕を回し、抱きかかえて部屋の中に運んでくれている。
「朝比奈…先輩……すみませ…ん…」
「いいよ。ベッドどこだ……あ、ここか……下ろすぞ…」
ゆっくりとベッドに下ろされた。
「一応ロッカーから服とかも持って帰って来たけど、制服だから着替えた方がいいな。着替えどこだ?」
「あ、クローゼットの中の引き出しに…」
「じゃ、開けるぞ」
クローゼットを開き、先輩が着替えを適当に出してくれた。
「俺はリビングにいるから、着替え終わったら呼んで」
そう言って、寝室を出てリビングに行った。
着替え終わって、先輩を呼ぶ。
チラリと顔を覗かせ部屋に入って来ると、私のそばに来て横になっている私に言った。
「森下、体温計は?」
「あ、この引き出しに…」
ヘッドボードの小さな引き出しを開けて、体温計を取り出す。
「熱、測ってみて。病院行った方がいいなら、つれて行く」
「先輩、すみません。寝てれば大丈夫です」
「いや、そんなに辛そうなのに無理だろ。せめてなんか軽く食って、薬飲まないと」
「あぁ……」
最初のコメントを投稿しよう!