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先輩がそう言って、もう一度クローゼットを開け、引き出しから別の着替えを出してくれた。
先輩がリビングに行っている間に着替え、枕元に置いた体温計で熱を測る。
薬が効いて汗もかき、体温は37度8分まで下がった。
先輩を呼ぶと熱を冷ますシートを手に持って、私に近づき片手で私の前髪をかき上げると、もう片方の手でシートを額に貼った。
ひんやりして気持ちいい。
「熱、少し下がったな」
「はい……」
「でも、もう少し下がらないと話が出来ないな。もう少し寝た方がいい」
「はい……」
先輩はそう言って、部屋からまた出て行った。
*****
広いお座敷の少し段がある場所に正座をして座っている。
横を見ると父が座っていて、向こう側に兄の姿が見える。
振り返って私の後ろに母が座っていた。
「よく来てくれた。たくみ」
父がそう言って声をかけた方に視線を移すと、正座をして真っ直ぐ父を見ている少年がいた。
くっきりとした二重の目に、鼻筋が通った綺麗な鼻、口はぷっくりと柔らかそうな唇。
髪は短く、ツンツン頭。
ちょっとカッコいい……と思った。
「ここにいるのが話していた、ゆいだ」
「ゆい…」
私は少年から父に目を向ける。
「ゆい、これからは、たくみがお前を守ってくれる。仲良くするんだぞ」
「守ってくれるの…? たくみ…が…?」
もう一度少年を見ると、少年は満面の笑みで言った。
「よろしくな、ゆい」
「うんっ!」
*****
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