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「美味しそう……いただきます」
「ふっ、どうぞ」
レンゲを持ち、梅を少し混ぜてお粥をすくい、フウフウと冷まして口に入れる。
梅が口の中をさっぱりとさせてくれて、お粥とも合う。
「美味しい…」
「ふふっ、でも、お粥はレトルトを温めただけなんだけどな。あぁ、梅干しと卵の残りの材料は冷蔵庫に入れてるから、また森下、使ってくれ」
「あっ、そうだ。先輩、代金」
「ふっ、いいよ。そんな大した量じゃないし」
「ありがとうございます。すごく助かりました…」
「ふふっ、ほら、冷めない内に食えよ。あっ、その卵スープは美味いぞ。お粥をすくって、卵スープを加えて食ってみ」
先輩に言われた通りにしてみる。
卵スープに味がしっかりついていて、トロミがあるからお粥が卵雑炊に変わる。
「ふふっ、美味しい。これ、私好き」
美味しくて思わず横に立っている先輩を見上げて、笑顔で言った。
すると、先輩の手が私に伸び、スッと頬を包んで親指で頬を撫でる。
「ふっ……よかった」
優しく微笑む先輩に、ドキッとしてとっさにうつむく。
「あっ、ごめん……」
サッと手を離し、ローテーブルを挟んだ向こう側に座り、食べている私を見ながら話し始める。
「じゃ、食べながらでいいから、夢の話を聞かせて」
私は頷き、追っ手から山道を青年と逃げ、大きな綺麗な池に着き舟に乗せられ逃がされた事や、青年と約束を交わした夢の話をした。
翌日には、私はまだ幼く、父や兄と池に釣りに出かける夢を。
そして、ついさっき『たくみ』という少年と出会う夢を見た事を話した。
「全部モノクロでたぶん、繋がってるな。やっぱり誰かから、追われてるんだな…」
「はい…」
「で、青年ってだいたい何歳くらいだった?」
「顔は見えないんです。でも、18、19くらいかな…私より背は高くて、腕や脚も割としっかりしてて、走るのが速かった……」
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