幸せな夢

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先輩がそう言って手帳を鞄にしまい、ノートパソコンもビジネスバッグに入れて立ち上がる。 「じゃ、俺はそろそろ帰るよ」 「えっ、あ……帰る…んだ……」 とっさに顔を上げ先輩の顔を見た後、少し寂しさと心細さを感じ、うつむいた。 「ふっ、何…寂しい?」 そう言って私の頭に手を置き、そっと撫でポンポンと優しくたたく。 「嬉しいけど、俺も男だから……女性の部屋に、泊まる訳にはいかないだろ」 コクリと頷いた。 すると、フッと笑い私の頭にキスをして「可愛い奴…」と呟き、 「じゃ、帰るな」 と言って、鞄を持ち玄関へ向かった。 「ゆっくり寝ろよ。また明日…」 「はい…先輩、ありがとうございました」 「うん、お大事に」 ドアを開け、先輩は部屋を出て帰って行った。 先輩が帰って行ったあと、急に恥ずかしくなった。 帰ると言われて、寂しくなって引き止めようとした事…… 何をやってるんだか…… 先輩だったから何もなく済んだが、一歩間違えれば大変な事になっていたかも知れない。 私からと言っているようなものなんだから…… 明日、気まずいかも知れないなぁ… ガランと静かになった部屋でソファーに横になり、先輩の事を考えていた。 先輩は優しいし、営業の中でもイケメンだよなぁ。 切れ長の目で見つめられたらドキドキするし、背も高くてモテると思う。 そんな人が夢の話を真剣に聞いてくれてるなんて…… もう少し自分でも色々と調べてみようかな。 自分の手帳を出して来て、夢の話を手帳に書き、兄に電話をかけて池の話を訊いてみた。
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