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兄とは久しぶりに電話で話したが、池の話をすると兄の方から色々と話してくれた。
兄は幼い頃に行ったあの池がずっと気になっていて、成人してからもう一度1人で行ったらしい。
懐かしくて池の周りを歩き、釣りをして帰ったという。
そして、また数年後に釣りに行った時、池の近くに住んでいる人が昔の話をしてくれたといって、兄は聞いた話を私に話してくれた。
約160年ほど前、あの池はもっと大きな綺麗な池で、魚も今より釣れて食べられていた。
(今は水も濁って、釣れるのは外来魚ばかりだ…)
大きな池だった為、向こう岸に行く小舟が停泊していて、渡し舟があったといった。
池の周りには大きな屋敷がいくつもあって、穏やかに暮らしていたが、ある日派閥争いに巻き込まれ雇われた野武士に襲われて、大半の屋敷は一家全滅し衰退してしまったという話だった。
(私を切ったのは……野武士……だったんだ…)
その話を聞いた兄は、その場で泣き崩れたと言った。
何故かは分からないが、無性に悲しくて、我慢できずに泣いてしまったらしい。
兄の話を手帳にメモをして、もう一度池の名前と駅の名前を訊いて電話を切った。
やはり、本当にあった事なんだ。
一家が襲われているという事は、兄もそこで襲われ死んでいる。
兄は私のように前世の記憶はないのだろう。
だけど、無性に悲しくなったのは、自分の事や家族を襲われた事を悔やみ、悲しんだに違いない。
夢の中の兄は、私の兄なんだ…
私は野武士から逃げていたって事だ。
週末に一度、池に行ってみよう。
私は小学二年のあの時に行った以来、一度も行っていない。
池に行って、私も話を聞いてみようと思っていた。
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