幸せな夢

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***** 庭で父と向かい合って、兄とたくみが竹刀を持って素振りをしている。 父が熱心に2人に竹刀の振り方を教えて、父を見て真似をし汗をかきながら稽古している。 私はゆっくりと縁側に行き、正座をしてその様子をずっと見ていた。 父の稽古が終わり、2人が父に頭を下げ「ありがとうございました」と挨拶をすると、庭の端にある井戸に向かい、2人で水を汲み桶に入れて、その場で裸になり水浴びをして汗を流す。 母が手拭(てぬぐい)と着替えを持って来て、手拭を2人に持って行くよう私に渡した。 私はそれを持って2人の元に走って行くと、2人はスッキリした顔で笑い手拭を受け取って、体を拭き縁側に来て母が持って来た着物に着替えた。 2人が着替えると、3人であの大きな池に遊びに行く。 兄は竿を持ち先に走って行き、たくみは私の手を握って私に合わせて走る。 毎日竹刀を握るたくみの掌は、マメが出来て硬くなっていた。 池に着くと兄は釣りをし、たくみと私は木に登って遠くの景色を見たり、話しをした。 「たくみ、たくみは寂しくないの?」 「ん…? 寂しい?」 「うん。(とお)様や(かあ)様と離れて、ゆいの所に来るの、嫌じゃなかった?」 「ふふっ、嫌じゃなかったよ。俺は父上(ちちうえ)の話を聞いた時、嬉しくて自分から名乗り出たんだ」 「どうして嬉しかったの?」 「俺、本当の親がいないんだ。俺を拾ってくれた親の家は生活が苦しくて、少し大きくなってからは物を盗ませたり、働かせたりして、何も持って帰れない時は殴られたり蹴られたりして辛かった」 「っ……ご、ごめんね……っ…嫌な事……訊いちゃった……」 「ふふっ、ううん」 たくみが私の頭を撫でる。 「だから、父上が「奉公(ほうこう)に来てくれる男の子を探している」って町に来た時、嬉しくて飛び出して名乗り出たんだ」 「でも、父様と一緒に帰って来なかったでしょ?」
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