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「うん。育ててくれた親が「金をよこせ」って言って、父上は言われた額を用意して持って来たんだ。だから、俺は身を整えて、後で来たんだよ」
「そっか……じゃ、もうたくみは、ゆい達の兄弟なんだね」
「ふふっ、うんっ!」
涙を拭いてたくみと笑い合うと、木の下から鼻をすする音が聞こえる。
2人で見下ろすと、兄が袖で顔を拭いていた。
それを見て、たくみは目に涙を滲ませて笑った。
「じゃ、たくみはゆいの弟」
「えっ! ゆいは俺の妹でしょ!」
「うっそ! ゆいの方が上だよぉ」
「えぇ! 俺、9歳になったよ。ゆいは8歳だろ」
「えっ……うん…」
「ふふっ、じゃ、ゆいが一番下で、けん兄が一番上、俺が真ん中」
「はーい…」
口を尖らせて返事をすると、3人で笑った。
*****
目が覚めて、涙を拭いて起き上がる。
たくみ君の生い立ちを知って、涙を流していた。
彼は私の1つ上なんだ。
私は8歳か……
夢の中で兄の事をけん兄って言っていた。
兄の名前は『森下 剣』同じ名前だ。
たくみ君は身請け同然で屋敷に来たんだ。
でも、本当に嬉しそうに笑ってたな……
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