幸せな夢

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毎晩見る夢は子供の頃の夢で、2人が剣の稽古をしている姿や3人で遊んでいる姿をよく見た。 近くに住む同い年くらいの男の子達とも仲良くなり、屋敷の庭に皆集まり、剣の稽古をしていた。 7、8人で山道を駆け回り探検したり、木に登って皆で遠くの景色を見たり、洞窟を見つけて秘密基地にしたり。 一番小さく女の私はいつも走るのも遅く、皆について行くのに必死だったが、たくみだけはずっと私のそばにいて、手を握り守ってくれていた。 すっかり私の手よりも大きくなった彼の手は、硬く逞しい手になっていた。 体も大きくなり、兄の身長を超えていた。 朝、目が覚めても涙を流している事はなくなり、楽しい夢のお陰で元気に仕事が出来ていた。 先輩は毎日忙しそうに朝から取引先を回り、夕方になってオフィスへ戻って来た。 やっとひと息つけたのか、大きなため息をついて椅子に座る。 「お疲れ様です。先輩、大丈夫ですか? ちゃんと食べてます?」 「あぁ……たまに、ランチを逃してそのまま食えない時があるけど…」 「……食事はしないと。それに休憩も…倒れますよ」 「うん……」 ゆっくり椅子ごと先輩が、私の方に体を向ける。 そして、うつむいて低い声で先輩が言う。 「森下……」 「は、はい…?」 「今日、(めし)付き合ってくれる?」 「えっ、はい、いいですよ」 「ふっ、ありがとう。じゃ、帰りは車で送る」 「ふふっ、何でそんな言い方……怖いからぁ…」 「ふふっ、ごめんごめん」 終業のチャイムが鳴って、2人で自社ビルを出て駐車場に向かい先輩の車に乗る。 レストランで食事をして、先輩の仕事の話を聞くと登山やキャンプをする方が増え、大型ショッピングセンターの催事場(さいじじょう)で展示したいという依頼が増えたと話す。 「じゃ、また登山やキャンプを始める方が増えるでしょうね」 「そうだろうな。嬉しい事だけど、全国で広がってるから追いつかないんだよな」 「営業を増やさないと、皆、倒れちゃうよ…」 「ほんと、そう……」 「じゃ、まだしばらくは忙しいですね」 「まぁ…でも、来週は午前中予定は入れてないから、話聞くよ」
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