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先輩は鞄をソファーの横に置き、スーツの上着を脱いでソファーの背もたれにかける。
ソファーに腰を下ろすと、黙ったまま私を見ていた。
お湯が沸き、ペーパードリップで二杯分のコーヒーを淹れる。
コーヒーカップに二杯分淹れ、トレーに乗せて持ちローテーブルにそっと置いた。
「ありがとう」
「いえ、どうぞ」
2人で砂糖とミルクを入れ、スプーンでかき混ぜ同時にカップに口をつける。
ひとくち飲んで、ホッと息をつく。
「森下、急に部屋にあがったりして…ごめん……コーヒーを飲んだら帰るよ」
「ふっ、いえ……先輩にはいつもお世話になってますから、先輩が疲れた時は私が話を聞きますよ」
そう言った後、ソファーに座っていた先輩が私に近づき手を伸ばして、腕をグイッと引っ張った。
勢いよく先輩の胸に倒れ込む。
ぎゅっと抱き締められて、耳元で先輩が言う。
「ごめん、森下、少しだけいいか…」
広い胸の中、爽やかな先輩の匂い、力強い腕に包まれてコクリと頷く。
突然抱き締められて、嫌だとは思わなかった。
その代わり、私の心臓はドキドキと鼓動を速めていて先輩に聞こえてしまわないか余計にドキドキしていた。
「ふっ、森下……すげぇ、ドキドキしてる」
先輩がそう言った瞬間、両手で先輩の胸を押し腕を振りほどいて離れる。
先輩にバレて恥ずかしくて、顔が火照って熱い。
「まだ、まだ…足りないから…」
そう言って、先輩はまた私の腕を引っ張り、抱き締めた。
「はぁっ……すげぇ…ホッとする……」
耳を先輩の息と声がくすぐる。
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