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切ない夢
話をしていると、いつの間にか遅い時間になっていて、彼が帰る時間。
一緒に玄関に行き靴を履こうとすると、
「結衣、ここまででいい。もう夜遅いから、部屋から出ちゃダメ」
「ふっ、うん、分かった」
「じゃ、また明日。いい夢を…」
そう言ってキスをした。
「気をつけてね。おやすみ…」
「うん、おやすみ」
彼はドアを開け帰って行った。
しばらくすると「家に着いたよ。おやすみ」とメッセージが携帯に届く。
返信をして布団に入った。
*****
「ゆいー! ゆいー! どこだー!」
「あっ! たくみの声だ!」
雨が降ってびしょ濡れになり、重くなった着物の裾を片手で持って、木の陰から飛び出て叫んだ。
「たくみー! たくみー! ここだよ! たくみー!」
すると、ビチャビチャと走って来る足音が聞こえる。
「ゆいっ! ゆいっ! あれ? この辺で」
「たくみ!」
たくみの姿が見えて走り出し、彼の方に向かう。
「たくみ!」
そのままの勢いで、彼に飛びつく。
「ゆい!」
逞しく成長した彼の胸に包まれ、ぎゅっと抱き締められた。
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