初めての夢

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改札を出て、私は見た事のある景色に懐かしさを感じ、 「こっちだよ」 と言って、先頭を歩き道案内をする。 駅から徒歩では結構な距離があるが、私は迷わず池に辿り着いた。 「ここだよ」 「結衣……マジか…ほんとに知ってたのか…?」 「うん……何でだろ……っ……初めて来たはずなのに……ふぇーん……怖いよぉ…」 そう言って、自分が本当に知っていた事に戸惑い怖くなって、母親に抱きつき泣いた事がある。 その池は以前、夢で見た場所だった。 そんな夢がいくつもあって、中学や高校でも友達と話している時にふと「あ、夢で見た、会話と光景」と脳裏に浮かび、友達が言う言葉を同時に言うと、皆驚いていた。 夢で見た事を憶えていて、前(もっ)て防げる事はしておくが、光景が再現され始めてから気づく事が多い為、とっさにやめたりする事が多くなっていく。 私、森下(もりした) 結衣は、大学を卒業し株式会社 善光商事(ぜんこうしょうじ)に就職して2年目の24歳になった。 OLの私の仕事は営業事務で、営業のサポート兼雑用係だ。 オフィスに着くと、営業の朝比奈(あさひな) (ゆづる) 先輩が声をかけて来た。 「どうしたんだ? 顔色悪いぞ」 「あぁ、朝比奈先輩。おはようございます」 「おはよう。大丈夫か?」 「はい…また、変な夢を見て…」 そう言って、見た夢の話をした。 「何だそれ。現代じゃないのかよ……しかも、モノクロ?」 「はい……ほんとに、あんな夢は初めてで…」 「でもまぁ、正夢になるって事はないよな。たまに森下、正夢になるんだろ」 「はい…まぁ…」 デジャブの夢とはまた違って、夢で見た事が現実に起こる事がある。 ただの夢だと思っていたら、事件としてニュースになったり、身の回りでも良い事もあれば不幸になる事もある。 だからこそ、あんな夢を見た事が気になっていた。
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