417人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
改札を出て、私は見た事のある景色に懐かしさを感じ、
「こっちだよ」
と言って、先頭を歩き道案内をする。
駅から徒歩では結構な距離があるが、私は迷わず池に辿り着いた。
「ここだよ」
「結衣……マジか…ほんとに知ってたのか…?」
「うん……何でだろ……っ……初めて来たはずなのに……ふぇーん……怖いよぉ…」
そう言って、自分が本当に知っていた事に戸惑い怖くなって、母親に抱きつき泣いた事がある。
その池は以前、夢で見た場所だった。
そんな夢がいくつもあって、中学や高校でも友達と話している時にふと「あ、夢で見た、会話と光景」と脳裏に浮かび、友達が言う言葉を同時に言うと、皆驚いていた。
夢で見た事を憶えていて、前以て防げる事はしておくが、光景が再現され始めてから気づく事が多い為、とっさにやめたりする事が多くなっていく。
私、森下 結衣は、大学を卒業し株式会社 善光商事に就職して2年目の24歳になった。
OLの私の仕事は営業事務で、営業のサポート兼雑用係だ。
オフィスに着くと、営業の朝比奈 弦 先輩が声をかけて来た。
「どうしたんだ? 顔色悪いぞ」
「あぁ、朝比奈先輩。おはようございます」
「おはよう。大丈夫か?」
「はい…また、変な夢を見て…」
そう言って、見た夢の話をした。
「何だそれ。現代じゃないのかよ……しかも、モノクロ?」
「はい……ほんとに、あんな夢は初めてで…」
「でもまぁ、正夢になるって事はないよな。たまに森下、正夢になるんだろ」
「はい…まぁ…」
デジャブの夢とはまた違って、夢で見た事が現実に起こる事がある。
ただの夢だと思っていたら、事件としてニュースになったり、身の回りでも良い事もあれば不幸になる事もある。
だからこそ、あんな夢を見た事が気になっていた。
最初のコメントを投稿しよう!