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「いつもはカラーの夢?」
「はい。どんなに昔の夢でもカラーなんです。だけど、今日の夢はモノクロで…」
「うーん、いつもとは違う夢か……何か、他に気になる事はなかったのか?」
「気になる事?」
「うん。例えば、他に誰かと一緒にいたとか、声を聞いたとか、部屋の様子とか…」
先輩にそう訊かれて、衝撃的で思い出すのも本当は怖いけれど、もう一度『切られる夢』を思い出す。
周りは真っ暗で何も見えない。
私の他には誰もいなくて、部屋に1人で屈んでいた。
目の前を数人の男達が話しながら横切って、行き交う足音が聞こえていて、声がやんで突然目の前に襖が現れ開かれた。
入って来た男は、時代劇の町内にいるような武士の格好で丁髷。
「丁髷をした武士で、部屋には1人で隠れてたみたいですね。屋敷の中を探し回っていたみたいだったけど…」
先輩にそう話していると、始業のチャイムが鳴った。
「森下、今日ランチ一緒にしようぜ。話はまたその時に聞かせて」
「はい…」
「じゃ、営業行って来る」
先輩はデスクの上のビジネスバッグを持ち、オフィスを出て行った。
私はオフィスで事務処理をして、先輩に頼まれていた仕事をする。
お昼前に先輩はオフィスに戻って来た。
「お疲れ様です」
「おう! お疲れ。じゃ、食堂行こうか」
食堂は2階、オフィスは3階になっている。
1階はロビーで受付があり、4階は会議室、5階は社長室や応接室になっている。
自社では主にアウトドア用品を取り扱っていて、最近キャンプをする人が増え仕事は忙しくなっていた。
食堂で日替わりランチを注文して、トレーを持ち空いているテーブルに置き席に座る。
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