初めての夢

5/7

417人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
「それで?」 「えっ…?」 「いや、夢の話。「見つけた」って言って切りかかったんだよな」 「はい…」 食事をしながら先輩が朝の夢の話をする。 「じゃ、森下の事は知っているって事だよな。屋敷が襲われているのかな?」 「あぁ、そうかも知れないですね。私は息を潜めて隠れているぐらいですから…」 私は箸を止めて先輩の話を聞き、夢の中の状況を説明する。 「うーん。もっとその夢の前後が分かれば…って…後はないのか。切られてるからな…」 「はい……」 「そんな夢を見ると、やっぱ寝るのが怖くなったりする?」 「そりゃ、まぁ……夢とはいえ、殺される訳ですからね……怖いですよ」 「何度も見てると慣れて来るとか……」 「いえ……熱を出した時に見る『閻魔大王の夢』は本当に怖いんですから。カラーで赤鬼や青鬼がズラッと並んで見てて、大仏より大きい閻魔大王が目の前にいるんですよ」 「それさぁ、森下は夢って思ってるけど、高熱が出てヤバいんじゃねぇの?」 「ヤバいって?」 「そもそも、閻魔大王って冥界(めいかい)の王で死者の生前の罪を裁く神なんだろ」 「あぁ、まず死んだらそこに行って、天国か地獄か決められるっていうのを聞いた事がありますね」 「そう……もしかして、閻魔大王の所で「まだ早い」って、こっちに戻されてるとかじゃないだろうな…」 「いやぁ…でも病院に行って帰されてるから」 「病院って、いつ行ってんだよ。その夢見てからじゃねぇのか?」 「あぁ、そっか……そう言われると、熱が出た時に見てから…病院か……」 「いやっ絶対、帰されてるって……それ…」 「はははっ…」 余計に怖くなって、笑うしかなかった。 もし本当にそうなら、毎回死にかけてるって事になる。 もう何十回と見て、大人になってからは38度以上の熱が出ると見る。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

417人が本棚に入れています
本棚に追加