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「それで?」
「えっ…?」
「いや、夢の話。「見つけた」って言って切りかかったんだよな」
「はい…」
食事をしながら先輩が朝の夢の話をする。
「じゃ、森下の事は知っているって事だよな。屋敷が襲われているのかな?」
「あぁ、そうかも知れないですね。私は息を潜めて隠れているぐらいですから…」
私は箸を止めて先輩の話を聞き、夢の中の状況を説明する。
「うーん。もっとその夢の前後が分かれば…って…後はないのか。切られてるからな…」
「はい……」
「そんな夢を見ると、やっぱ寝るのが怖くなったりする?」
「そりゃ、まぁ……夢とはいえ、殺される訳ですからね……怖いですよ」
「何度も見てると慣れて来るとか……」
「いえ……熱を出した時に見る『閻魔大王の夢』は本当に怖いんですから。カラーで赤鬼や青鬼がズラッと並んで見てて、大仏より大きい閻魔大王が目の前にいるんですよ」
「それさぁ、森下は夢って思ってるけど、高熱が出てヤバいんじゃねぇの?」
「ヤバいって?」
「そもそも、閻魔大王って冥界の王で死者の生前の罪を裁く神なんだろ」
「あぁ、まず死んだらそこに行って、天国か地獄か決められるっていうのを聞いた事がありますね」
「そう……もしかして、閻魔大王の所で「まだ早い」って、こっちに戻されてるとかじゃないだろうな…」
「いやぁ…でも病院に行って帰されてるから」
「病院って、いつ行ってんだよ。その夢見てからじゃねぇのか?」
「あぁ、そっか……そう言われると、熱が出た時に見てから…病院か……」
「いやっ絶対、帰されてるって……それ…」
「はははっ…」
余計に怖くなって、笑うしかなかった。
もし本当にそうなら、毎回死にかけてるって事になる。
もう何十回と見て、大人になってからは38度以上の熱が出ると見る。
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