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そしてその夜、夢を見る。
*****
「さぁ、こっちだ。行こう」
そう言って手を私に差し出す。
彼の手を握り、繋いだ手を引かれ険しい山道を走る。
着物の裾が地面を這い、走りにくい私を見かねて彼が裾を捲り帯に挟んでくれて、再び走り出す。
後方から私達を追って来る男達の声が聞こえ、必死に山道を走って下りる。
すると、池が見えた。
「よしっ! もうすぐだっ!」
そのまま走り続け池に到着すると、一隻の小さな舟が待っていて船頭さんが1人乗って私達を待っていた。
一緒に来た彼が先に舟に乗り、私の手を引いて舟に乗せてくれる。
そして船頭さんに何かを渡し話をした後、舟から岸に上がった。
「必ず生きて逃げろ。必ずまた会える、約束の場所で待ってて。行ってくれ!」
彼がそう言うと、舟は動き出し岸から離れた。
*****
朝、目が覚めると涙を流していた。
『切られる夢』と同じモノクロの夢。
あの夢と関係があるのかは分からなかったが、同じように男達から逃げている夢だった。
私も着物を着ていた。
そして彼は誰なんだろう。
顔は見れなかったが、姿は自分と同じくらいの青年のようだった。
≪必ず生きて逃げろ。必ずまた会える、約束の場所で待ってて。行ってくれ!≫
約束の場所って……どこ?
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