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三か月後、渡と遠山、それに絵里はあの廃校を再び訪れていた。校舎は補強と改修がなされ、中にはカフェが併設され、地域の憩いの場に改装された。
遠山が言う。
「解剖してみて分かった事ですが、人工的に生まれた個体なので、内臓に奇形がありました。心臓が本来のサイズの半分しかなかった。餌になる緑の多い静かなこの土地だから生きていられたんですね」
絵里が悲し気な表情で訊く。
「もともと長く生きられなかったと?」
「あの事件がなければ長生きしたかもしれない。そんな小さな心臓で重機と格闘したんだ。急性心不全というところだね」
渡が校舎の脇に飾られたメガテリウムの巨大なはく製を見ながら言った。
「はく製になってここの名物になって、学校の建物は残った。こいつにとっては本望なんじゃないか。結果的に守ったんだからな」
視線を綺麗になった校舎に向けて渡は続けた。
「子どもの頃の友達との、思い出の場所をね」
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