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世界が浮かんでいくのを
ただ眺めるしかなかった私を
「綺麗」と呟いたあなたは
今どこにいるのでしょう
満開の桜も五月雨の紫陽花も
眩いひまわりも見てきたのに
寒空から降る結晶を
教えてくれたあなたは
今何を見ているのでしょう
静かにめくられる乾いたページ
耳を潤す豊かなメロディー
月夜に照らされるあなたの涙を
茫然と見下ろすしかなかった
あの頃のような
燃える色彩はとうに失せ
すっかり色褪せてしまった私だけれど
そんな私を思い出して
どうか笑ってほしい
色だけでなく
いずれ朽ちてしまうこの体
でももう怖くない
この世界は
ずっと美しいと知っているから
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