多忙のはじまり

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その日社長は少し不機嫌だと感じたが、私が初めて作ったパースを見て褒めてくれるだろうと期待を胸に確認をしてもらった。 だが、不機嫌だった社長の顔が険しくなり、私に一言こう言った。 「なにこれ」 上機嫌だった私の心は一気に冷め、 「パースです」 そう答えるしかできなかった。 すると社長は私が出した紙に赤ペンで修正点を書いた。 時間が経てば経つほど、社長が話せば話すほど赤の範囲が広くなっていき、私が提出した紙は一気に赤く染まった。 そして社長は事務所全体に聞こえるよう、私にこう言った。 「あのさ、この仕事20万円なんだよ。これじゃ1万円も出してくれないよ。全然ダメ。やり直し」 そういい提出物を渡してきた。 私は返事することしかできず、その場を去った。 自分の席に戻ると、隣の上司が心配そうにこちらを見たが、私は気づかないふりをして修正点を直した。 見てしまったら今にも溢れそうな悔し涙が出てきてしまうため、見れなかったのだ。
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