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駅とおばあちゃん
「あれっ? 誰だろう?」
ホームに戻ってきて鞄を確認しようとしたら、鞄の近くに誰かいた。さっきまで誰もいなかったのに。外から来たのかな。見た感じお年寄りの女の人みたい。どうしたんだろう?
[あなた、ここに来るのは初めて?]
「えっ?」
おばあちゃんが私を見て話しかけてきた。おばあちゃんの口から声が聞こえているはずなのに、頭の中で話しかけられたみたいなモヤモヤがある。
他に誰かいないか確かめてから私はおばあちゃんの問いかけに答えた。
「は、はい」
[私もね、ここに初めて来た時はびっくりしたもの。だって、周りになにもないのだもの]
「はぁ」
おばあちゃんも前に来たことがあったんだ。私だけかと思ってちょっとドキドキしてた。でもおばあちゃん、どこから来たんだろう? 改札口は閉まってて動かなかったから他の扉から来たのかな。でもそんなところあった?
「あれ? おばあちゃんってもしかして――」
[うふふ。あの時助けてもらったしがないおばあちゃんよ]
「でも、なんでこんなところに?」
おばあちゃんは笑ったまま私を手招きした。隣に座ってほしいみたいだ。素直におばあちゃんの隣に座った。防水ケースから携帯を取り出して鞄に入れる。濡れた防水ケースはおばあちゃんからもらった袋にしまった。
「おばあちゃん、なんでこの駅にいるの?」
おばあちゃんがなんでここにいるのか。おばあちゃんを見つけてからずっと気になっていた。ここには自分しかいないと駅員さんを探してる時に思っていたからかもしれない。おばあちゃんはお年寄り特有の柔らかくて優しい口調で教えてくれた。
[実はね、私はここにいるわけじゃないの]
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