駅とおばあちゃん

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 [それが夕立の問いかけに対するあなたの答えね?]  「知りませんよ。そもそも、夕立が問いかけをするんですか? 夕立ってただの自然現象ですよね?」  心のなかに黒い何かが渦巻いている気がする。すべてがどうでも良くなってきた。まずいな、私の悪い性格が出てきた。周りの期待という名の重圧に応えるための他人に優しい性格と、全ての希望を諦めようとして諦めきれずに未練を残して絶望する、私に優しくない性格。今は、私に優しくない性格が(まさ)っているようだ。  [この駅の外では、夕立はただの自然現象と捉えるかもね。でも、この『夕立の駅』では、ここに来た沢山の人たちの本音を胸に秘めた夕立がいるの]  「どういうことですか?」  [駅に来た人の心を覗いて、本音を外に吐き出そうとしてくれる夕立がいるのよ]  おばあちゃんの言っている意味が分からない。そもそも、自我がある夕立なんて聞いたことがない。  [駅の名前を確認する時、聞こえたでしょ? それがあなたに対する夕立の問いかけよ]  段々眉間の(しわ)が深くなっている気がする。なんでこんなにイライラするんだろう。ここに来てからずっと疑問しか出てこない。それに、。これもその夕立がやっているって言うの?  「意味が分かりません。私は帰れるんですか?」  [あなたが昔の自分に向き合うことができたらね]  「はぁ」  片手で顔を覆った。面倒くさいことになった。手の隙間からおばあちゃんを見ると、困った様子で何か考えている。その様子が、困っているように見えて余裕があることを示しているようで余計にイライラする。  [あなたのその考えは簡単には払拭できそうにないわね]  「それが取り柄のようなものなので」  [昔話を聞いてもらっても良いかしら?]  「私の気が変わらなければ大丈夫です」  [じゃあ話させてもらうわね]  そう言っておばあちゃんは懐かしむような顔を浮かべながら昔話を始めた。
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