僕の宿題

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僕の宿題

「なぁ、なんでこれをテーマに選んだんだ?」  夏休みに入る少し前、小学校では宿題の説明や準備を行っていた。そんな中で生徒達を悩ませるのが、自由制作の題材決めだ。小学五年生になるとプログラミングに挑戦することになるのだが、生徒の一人・石田君が提出した題材に、先生は首を傾げた。 「だめですか?」 「いや、だめじゃないが、プログラミングのテーマとちょっと違うような気がしてな。テーマはわかっているか?」 「はい。『みんなを笑顔にするプログラミング』です」 「わかっているならいいんだが、『みんなを笑顔にする』っていうのが『夕立の再現』か?」 「はい」  はっきりと答えた石田君に、先生はもう一度プログラミングの計画用紙を見た。  昨今の夏に降る雨は激しく、一度降り始めるとまず二日はやまない。だから雨が降るとなると、外出の取り止めが呼び掛けられるくらいだ。夕立なんて情緒ある景色は、とうの昔に失われた。それを再現したいというのだ。  計画内容では、窓に夕立の映像を、連動したスピーカーから雨音を流し、室内にいる人間に夕立の風景を感じてもらうというのだ。ほとんどの生徒がパソコン内で完結するゲームやシステムを提案しているというのに、ずいぶんと大がかりなものだった。 「これはかなり大変だと思うが…………」 「それでもこれをしたいんです」  まっすぐこちらを見ながら言う石田君に、なんと答えるべきか迷った。果たしてきちんとやりとげることができるのかという不安と、優秀な彼が作成するプログラミングに期待していたのもある。  でもーーーー 「わかった。困ったことがあったら相談しなさい」  背中を押すことを選んだ。
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