子供の頃の友達ほど信用できないものはない。

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友達百人できるかなという歌が、僕は何より嫌いだった。 僕は小さい頃からほとんど友達がいなかった。しゃべるのが何より苦手で、運動音痴、絵を描くことくらいしか取り柄がない僕にとって、友達を作るということはあまりの難事業だった。小学校の休憩時間はずっと席についたまま、時間が過ぎるのを待っていた。休憩時間は僕にとっては罰ゲームみたいなもので、友達がいない自分を苦しめる時間でしかなかった。 「おい、高橋。ドッジボールしようぜ」 学年が変わってすぐの頃、僕に声をかけるクラスメイトがいた。坂上君だ。一人きりの僕に、急に話しかけてきたのだ。 「え、ぼ、僕?」 僕は思わず聞き返してしまった。 「お前以外に誰がいんだよ。一人メンバーが足りないから今すぐ来いって」 彼に腕を引っ張られ、僕は校庭へと連れて行かれた。恐ろしいほど動きが遅い僕は、すぐに狙われ、ずっと外野だったが、みんなの輪に入れたことがあまりに嬉しかった。 そこから十五年が経ち、僕は普通の会社員として、普通の暮らしをしていた。絵は変わらずに描いていたが、プロになろうとかそういった気は全くなかった。 そんなある日、僕が好きな小説投稿サイトを見ていると、坂上君の名前を見つけたのだ。僕の頭には、あの時の教室での光景が浮かんだ。そして、小説を読んでみると、面白いのだ。まるでプロの作家が書いたような物語だった。 すごい。すごい。ネット上で坂上君の小説を見つけただけでも嬉しかったが、さらに作品を読んで、心がときめいた。僕の胸に、一つ願望が生まれた。この小説のキャラクター達を、僕の絵で動かしてあげたい。 そう思った僕は、小学校の頃の連絡網を引っ張り出した。そこに書かれた坂上君の番号に電話をかける。坂上君の声は、あの頃と変わらなかった。そして、僕は、一緒に漫画を作らないかと、提案した。そう言って、祈るような気持ちで待っていると、坂上君は快く引き受けてくれた。嬉しかった。僕と坂上君、二人で力を合わせれば、絶対に良い作品ができる。未来はあまりに希望に満ちていた。
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