子供の頃の友達ほど信用できないものはない。

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俺は今日もまた、高橋にイライラしていた。 高橋からの共同漫画の誘いは、全くと言って良いほど興味はなかったが、別に減るものではないし良いかという気持ちで、了承した。しかし、俺の小説が原作である以上、無茶苦茶にされるのも嫌なので、ある程度できれば俺に見せるという条件を付けた。 そして、高橋は、絶望的なくらいストーリーの構成力がなかった。俺の小説のストーリーが優れているとは思わないが、ここまで台無しにするかというくらい、場面の切り取りが下手くそだった。もはやわざとやっているのではと疑ってしまうレベルだ。 メールで送られてくる高橋の漫画をパソコンで確認しながら、俺はすぐに高橋に電話する。 「おい、高橋。今回の漫画も全然だめだ。まず1ページ目の入りは魅力がないし、2ページ目もキャラが生かせていないだろ。そして、3ページ目は……」 俺は指摘事項を一つ一つ丁寧に、できる限り怒りを込めて伝えていく。高橋は、「うげ」とか「うぐ」とか気持ちの悪い相づちを打つが、俺は全く気にせずにしゃべり続ける。 一ヶ月が経った頃、何とかラストシーンまでたどり着いた。これでやっと高橋から解放される。俺は安堵感に包まれていた。 そして、最終章の原稿が送られてきた。まともな出来栄えの漫画が来るとはこれっぽっちも思っていないが、これで最後だと思うと、少しは心が軽かった。 「え、は、なんだこれ?」 俺は最後のページを読んだところで、思わず叫んだ。結末が、俺の小説と違うのだ。高橋が勝手に変えたのだろうか。それにしても、全く面白くない。あいつの脳味噌はいったいどうなっているんだ。 腹の底から怒りがふつふつと湧いてきた。わざわざストーリーを変えて、ここまで下らないものにするなんて、俺の作品への冒涜以外の何物でもない。震える手でスマホを操作する。 「あ、坂上君。メール届いたかな」 そのいつもより明るい高橋の声が、さらに俺を不愉快な気分にした。 「おい、高橋。お前はなんでラストシーンを変えたんだ」 「え、ああ、それはね、すごく面白いオチが思いついたから変えたの。やっぱりハッピーエンドの方が読んでいて気持ちいいし、それで……」 「ばかやろう!!!!」 俺はスマホに向かって力の限り叫んだ。 「お前の考えるストーリーなんて幼稚園児も喜ばないんだよ。元のストーリーで作り直せ!!!」 スマホからは「ぴげえ」という謎の言葉が聞こえたが、構わずに通話を切った。 俺はソファにもたれかかり、温かいコーヒーを飲む。叫んだらストレスも和らぐもんだなと、思う存分くつろいだ。
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