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徐々に陽の傾き始めた田舎町。
つい先ほどヨーコおばちゃんに別れを告げた僕たちは今、徒歩圏内のコインパーキングを目指し、住宅街の裏通りを肩を並べて歩いている。
昭和の香りを色濃く残す、この寂れた通りはかつて、僕らがまだお互いに「ちゃん」づけで呼び合っていた時代に、それこそグッピーからの帰りによく歩いていた道だ。
「つき合ってくれてありがとな」
午後五時過ぎ。左方五十センチをぴたりとつける聖二が、ソーダ味の棒アイスを頬張りながら低くつぶやく。
お礼を言わなければならないのは、むしろこちらの方だ。ほんの数分前までの余韻と共に思い、しかし口に出そうとするよりもコンマ数秒速く、
「駐車場で、勇気出して声かけてよかったわ」
「勇気?」
「こう見えてビビリなんだよ、俺。あのとき、内心ガクブルだったぜ」
うはは、と鷹揚に笑い、発色のいいバーをまた一口。
親戚との再会に身構えていたのは、どうやら僕だけではなかったらしい。昔から社交スキルが高く、周囲に天真爛漫な印象を与えていた彼だけあって、その発言は意外でしかなかった。愛おしさにも似た感情が、腹の底から一気にせり上がる。
ほとんど無意識のうちに、己が唇は言葉を紡いでいた。
「聖二。おまえって、本っ当にいい奴だよな」
「おいおい、今さらかよ。専門じゃ聖人君子の聖二くんって呼ばれてるんだぜ?」
「聖人君子……略してセイシって呼んでいいか?」
「やめい!」
そうこうしているうちに、前方に古めかしい神社が見えてきた。石造りの鳥居の下では竹ぼうきを手にした小柄な巫女さんが、せっせと掃き掃除の真っ最中である。ここまで来れば、目的地はもう目と鼻の先だ。
「家まで送るよ」
と聖二。
「ありがとう」
と僕。
本音を言えば、まだまだ一緒につるんでいたい。できることならばこのあと、想い出話を肴に酒の一杯や二杯、しっぽりと酌み交わしたい。思いつつ、それでいてどうにも弱気になってしまうのは、「飲みに行こう」の一言を紡ぎ出せずにいるのは、頭の片隅を「忌中」の二文字がかすめているからだ。
「なあ、聖二」
喉の奥で跳ねる心臓。高速で回り続ける思考。
やはり言わなければ、と思う。何せ大学の夏休みも残りあとわずか。否が応でも二週間後にはメゾン・ド・ミラクルハッピーなるキラキラネーム・アパートメントに戻らなければならず、あまつさえ聖二の通う美容専門学校は一足早く、明後日には新学期を迎えてしまう。
ざわめく焦燥を胸に、あらん限りの決意と共に、しかし視線はじっと足元に落としながら、
「今晩、軽く飲みに行かないか?」
「え?」
「俺と……飲みに行ってくれないか?」
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