20人が本棚に入れています
本棚に追加
あれは、誰だっけ?
目覚めてから、さっきまで見ていた夢のことを思い出す。
夢というよりもあれは私の記憶だったんじゃないかってぐらい、鮮やかな感覚。
家の前の畑で、汗だくになって一緒にトンボを追いかけた。
まだ青いグーズベリーの実を食べて二人でその酸っぱさに苦笑いして。
私のことを『リッちゃん』と呼んでいた、あの子は――。
「えっと、キョンちゃん……?」
顔を思い出したのと共に、無事に名前も思い出せたみたい。
そう、キョンちゃん。
夏の日の太陽みたいに、元気な女の子。
いつから私、キョンちゃんのことを忘れてしまったんだろう?
たった10年前の記憶、幼稚園の友達の名前だって顔だってまだ覚えてるのに。
まるでキョンちゃんのことだけを、スッポリと忘れてしまっていたみたいだ。
最初のコメントを投稿しよう!