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階下に降りたら、朝の畑仕事を終えたばあちゃんが丁度帰ってきたところ。
「麦茶、持ってこようか?」
「あら、ありがとう。リッちゃん、今日は早いねえ」
早い、なんて言うけど時計は8時。
父さんも母さんも既に仕事に行ってしまって、家には夏休みの私とばあちゃんだけだ。
玄関の上がり框に腰を下ろし休むばあちゃんに麦茶を差し出した。
「朝ごはんは食べた? 朝採ったトマトもあるからね」
「うん、後で食べるね」
そう言いながらも、側に立ったまま動こうとしない私にばあちゃんは首を傾げた。
「どしたの?」
「うん、ばあちゃんなら覚えてるかな? うちの近くにキョンちゃって子、いた? 私が、ちっちゃい頃に遊んでた子で……」
夢の中で、キョンちゃんと二人でばあちゃんからお菓子を貰っていた。
おいしいねって笑い合う私達を、ばあちゃんはほほんで見守ってくれていた。
ばあちゃんは私の話に耳を傾け、しばらく何か考えて、それから。
「リッちゃん、覚えてたんだね。キョンちゃん、京香ちゃんのこと」
京香ちゃんっていうんだ、やっぱり実在してた!
「私、待ってたよね? キョンちゃんが遊びに来てくれるの。うん、ずっと待ってた気がする」
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