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「京香ちゃんね、佐藤さん家のお孫さんなのよ。元々京香ちゃんたち一家は市の方に住んでいてね。京香ちゃんのお父さんは佐藤さん家の一人息子だったから、一人娘の京香ちゃんとお嫁さんを連れて、時々佐藤さん家に遊びに来てたのよ」
家の畑を挟んだ斜め向かいに見える佐藤さん家、そこにはばあちゃんのお友達の佐藤さんという老夫婦が住んでいる。
穏やかで優しい笑顔の佐藤さんは、私を見かけるたびにいつも
『大きくなったね、リッちゃんいくつになったの? あ、お菓子があるのよ、ちょっと待ってて』
と、会うたびに呼び止められて私にお菓子をくれた。
そうか、キョンちゃんは50キロも先にある市に住んでいたんだ。
毎日近くにいたわけじゃなくて、時々佐藤さん家に来た時に私と遊んでくれていたんだ。
「京香ちゃんは、来る度にリッちゃんと遊ぶのを楽しみにしてたねえ」
懐かしそうに微笑むばあちゃんだけど、やはりどこか寂しそうに見える。
「ねえ、ばあちゃん。キョンちゃんは、もっと遠いところに引っ越しちゃったの?」
だから、ここにも来られなくなったの?
佐藤さん家に来てたなら、きっと私のところに来てたはずじゃない?
『リッちゃん、またね! また遊ぼうね、絶対ね』
キョンちゃんの笑顔が浮かんでくる。
あの約束は嘘なんかじゃない、なにか大人の事情とか、そういうので遊びに来られなくなったり……?
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