【episode1 - 鏡の中】

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

【episode1 - 鏡の中】

その日、私はある男性と肌を重ねるため車の助手席にいた。 一年ほど前に購入したというブルーボディーの車内は快適である。 他愛無い話をしながら目的地に到着すると素早く個室に入った。 ご時世的に、手洗いうがいは必須である。少々ムードには欠けるが、連れ立って洗面所に向かう。 洗浄を終えると鏡の前で視線が合った。 抗えない吸引力に、気がつけば互いを強く抱き締めていた。 彼の背中に腕を這わせると自然に唇が触れる。 夢中で求め合う私たちの姿が次第に乱れていく。 「なんか…たまんないな。」 鏡の中の自分たちと目が合った彼が呟く。 情熱的に舌を絡ませるキスの心地良さに、私たちは立ち尽くしたまま幾度も互いの唾液を感じた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!