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私を心地よい微睡から呼び戻したのは、体が浮かぶふわりとした感覚だった。
なんだろう?
せっかく良い眠りだったのに。誰が私を起こしたのだ。
ちょっと機嫌が悪くなったけど、ひょっとしたらあの子かもと思い至り、現金にも一気に気分が高揚する。
久しぶりに顔を見せに来てくれたのだろうか。いったい、いつ振りだろう。子供の頃はよく一緒に遊んだものだ。ザリガニを釣ったり、蓮の花を観察したり、オタマジャクシが孵るのを見たり……懐かしい。
そわそわと見上げてみた。けれど、あの子の姿はなく、目を凝らしてみても青い水面があるだけだ。
なあんだ。
私はがっかりして、上向きのまま沈んでいく。水面の波紋に遮られて、差し込む光がゆらゆらと揺れた。
おかしいなあ。寝ぼけて自分で浮上してしまったのだろうか。あの子が来てくれたと思ったのに……
忘れかけていた寂しさが振り返してしまった。また眠ろうと、さらに底へ沈もうとする。だが、できない。意思は下へ行こうとするのに、それに反して体が天上へ引き寄せられていく。
私は混乱した。
これは、何だ。誰が私を引き上げている?
もがきながら天を仰いだが、頭上には何者の姿もない。私は怖くなり、がむしゃらに体を動かした。
けれど、抵抗虚しく、私はどんどん水上へ浮かんでいった。
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