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△▽
「どうぞ」
コトンと音を立てて湯気の立ち上る湯のみが置かれる。
お茶を置いたのは眼鏡の男だ。
名を、テンというらしい。
そして琉星は今現在、和室の畳の上に正座で座っていた。
足元には紫の座布団が敷いてある。
なんだか落ち着かず周りをきょろきょろと見回していると、部屋にはまるで合わない真っ白な壁時計が目に付いた。
(なんでここに時計?)
そんな疑問を抱いていると、ふとテンから声をかけられる。
「琉星くんはあの人の孫だよね?」
「え、はい」
あの人とは言わずもがな、祖父のことだろう。
「先程は無礼を働いたな。すまない」
琉星の前に座るスズが突然話しかけてくる。
どこか尊大な態度ではあるが謝罪をしたいという気持ちは伝わってくので琉星が、「大丈夫ですよ」と言おうとしたが、それよりも先に、スズはパシっと頭を叩かれていた。
「こーら、スズちゃん。その謝り方はダメでしょ?」
「ええい、うるさいのぅ。私は元来こういう喋り方なのじゃ。仕方なかろう」
「もうっ」
テンは、はあっとため息を吐いた。
多分いつものことなのだろうな、と琉星は思うことにする。
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