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琉星は、身を起こそうとすると突然テンが顔を覗きこんできた為、再び畳の上へ倒れてしまった。
「て、テンさん!?」
テンは琉星の腕を掴むと、身体を起こすように引っ張りあげる。
「琉星くん、さっき話の流れで聞いただろうけど、スズは人間じゃなくて。妖怪、猫又なんだ」
「猫又……」
猫又といえば確か、尻尾が分かれているあれのイメージだ。
「そして俺もまた人間じゃなくて、天狗」
「あ!だから名前が……」
「そうそう」
テンはニッコリと笑い、いつの間にか手に持っていた天狗の面を顔につける。
「俺は天狗だけど、人間の血も混じってるんだ。
だから、俺はこのお面で天狗になったり、人間に化けたりしてるんだよ」
「へぇ……じゃあ、スズさんも?」
「スズちゃんの場合は修行してあの姿になっているんだよ。だから俺とはちょっと違うかなー」
テンはスズが走り去った方向を向きながら、呟く。
その表情は読み取れないが、どこか憂いを含んでいるように思えた。
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