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翌日、琉星は家の玄関で靴を履いていた。
昨日届けられた、祖父の遺書とも言える紙を持って。
「……よし、行ってきます」
誰もいない家に独り言のように告げると、どこからか"行ってらっしゃい"という声が聞こえた気がした。
▷▶︎▷
地図には、簡易的に商店街の地図と、糸川薬局の文字、そしてその裏に星のマークが書かれていた。
おそらくそこに行けばいいのだろう。
"妖珏堂"
紙にそう書いてあったが、中学三年生の琉星にはそれがなんと言う名前で、どういうものなのか理解が出来なかった。
しかし、大好きな祖父の最後の頼み。心残りでもある。
琉星がそこに行こうと思ったのは上記の理由があったからでもあるが、もうひとつ、そこに行けば祖父のことが分かるような、新しい自分に出会えるような、そんな直感も交わっていたからだった。
しばらくすると、商店街でも一店舗しかない薬屋。糸川薬局が見えてきた。
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