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古着とタバコの匂い
元彼に包まれている匂いだ
心地よい、幸せの香り
元彼を見上げると、そこには見覚えのある他の顔があった
「あ、あなた…なんでここに…!」
あの薬屋
「なんでここにも何も…俺が君に見せている夢だからだよ」
俺が君に見せている夢…?
「どういうこと…?」
「君の愛する人の思い出や記憶を夢の中で見せる
それが俺の力ってだけだよ
愛する人は人によって毎回違うけれどね
因みに俺の姿も、見る人によっては全く異なった見た目になっているだろうね
今の俺の容姿は、君が望んだ姿をしているから」
「何のために…そんなことをしているの…?」
「何のためねえ…」
男は顎を撫でながら目線を上に向けて、考えるような素振りをした
「直接的には、君には全く関係のない事だけど
強いて言うなら、自分の為だね
まあ試練のようなもんだよ」
「あなた…一体何者なの…?
人間じゃないの…?」
「何者か…昔は名前もあったような気がしたな
でももう、今は人間だった頃の姿が思い出せないな
忘れてしまったよ」
「あなた…死んでるの?」
そう言うと彼はいきなり高笑いをした
いままで、不敵な笑みを浮かべている表情は何度も見て来たけど、声をあげて笑っているところは見たことなかった
その笑い声は、獣のような金切り声に似ていたんだ
「あはっははは…
死んでるって言うか、ここはそういう世界だから」
え
「それ…私も死んでるって事…?」
そう言った時、私は思い出したんだ
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