nightmare

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見上げた新宿の空は星一つ見えなくて 代わりに胡散臭くて魅惑的なネオンたちが、私を嘲笑うかのようにギラギラと存在感を放っていた 「東京は星が見えないのね」 独り言のように、でも本当は目の前にいる男に話しかけるように大きく呟いた そんな彼は不敵に微笑んだ 「夜空がビルの明るさに負けているからだよ」 大きめのワイシャツから覗いた腕には無数の深い傷跡 身なりは綺麗なのに、どこかぬぐい切れない穢れのようなものが瞳にうつる 私は成り行きで、彼に死にたいんだと話した すると男は不敵な笑みを浮かべて言う 「楽に、死ねる薬を売っているんだ」 差し出された名刺は白地に簡素な楷書体 そこに店名と住所が記載されていた 「生きるのに疲れてしまったら、いつでもドアをノックして …醒めない夢を魅せてあげるよ」 薬か 新宿だし、普通の薬ではないよね… でも、私にはもう守るものも失うものもない 後日、名刺を頼りに男の店へと向かった 表向きはなんてことない、普通のバー 重厚そうな、黒い大理石のような見た目の扉を開ける 中央にあるカウンターの中に、ベストを着た男がいた 目が合うと恭しくお辞儀をして、待ってたよ、と言った 綺麗に磨かれた、光沢のある黒い石でできたカウンター 頼んでないのに、フルートグラスに注がれた黄金色のシャンパンが出てきた 彼はゆっくりと口を開く 「薬の代償だけど」 早速か 「お金はいくら払うのかしら?」 「お金はいらない その代わり、君の身体が欲しい」 かっ… 「身体…!? どういう事…?」 ふう、と彼は小さなため息を吐いた 「そのままの意味だよ」 それ以上彼は多くを語ることはなかった 無言の空間が2人を包む
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