moonlight shadow~悪魔の誤算~

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ふと、窓の外に気配を感じて振り向いた 「…あなたは…」 そこには大きな翼を広げた、犬歯が長く、毛深い肌をした 悪魔がいた 「薬を、一つ忘れてしまってね… 今日はそれを届けに来たんだ …そうしないと、君は悪魔に成れないから」 悪魔は窓からひらりと病室に入ると、長いかぎ爪から薬を手渡した 「悪魔さん… 悪魔さんに聞きたいことがあるの… 私その薬を飲んでから、意識もずっとはっきりしているし、何故か身体が病気の時より回復していって… 今は普通に会話もできるし、ご飯も、一般の人が食べるようなご飯を食べたいと思えるの 今の病院食じゃ物足りなくて… 病院の売店にある、あのチョコ味のバウムクーヘンが食べたい、なんて思うのよ ねえ、その薬は一体何で出来てるの…?」 「…何…? さあ…薬が出来る構造なんて知らないし、興味もないな ただ、念じれば薬が現れる、それだけだ まあ、強いて言えば、悪魔の身体の一部が薬になっている、と言う感じなんじゃないか?」 「身体の一部… 悪魔って何を食べてるの?」 「悪魔は食事をしない 人間と違って食べなくても生きていけるからだよ …あ、そうだなあ… たまに… 花を食べるな」 「花…?」 「そう ケシの花 悪魔の世界に唯一咲いている花だ 食べなくても生きていけるが、なんとなく、たまに食べたりする」 花を食べるなんて、ハチドリやミツバチみたいだ あれ?でもそれは花の蜜を食べるんだっけ…? 悪魔が水を入れたグラスを差し出してきた 私は薬を飲みながら、そのグラスを手渡してくれた悪魔の腕を見て、ふと昔の記憶を思い出した 「ねえ、悪魔さん…その身体に付いた傷、自分で付けたんでしょう…?」
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